キミの月は青くない

こんにちは。タイトルは全然関係ないです。
今日は先週休んだ分なにか書こうと思ったんですが浮かばない上に動画を撮ったら変な感じになったのでそのへんに転がってる自作小説を乗っけます。
小っ恥ずかしいかと言われると実はそうでもない。もともとどっかに公表しようと思ってた物なので...
それでは。
テラフィードの森の太陽が住うとされる方角に、「祈りの泉」と呼ばれる泉があった。
絶え間なく水が湧き出し、その水は魂を悪魔に盗まれた者すら息を吹き返すほどの力を持っていた。
私は青年の頃、その泉に何回も通い詰めた。
ダンドボールでは地区大会1位、全国評議会Sクラスの成績を叩き出した。しかし、それを隠していたのにも関わらず周りからは羨望ばかり。
「それは生徒間のトラブルな上に有名税だ。」
先生の一言が私の準備を不可逆的な段階へ進める後押しになった。馬鹿め。
かくして私は、届けも出さずに、コンピュータ・エイジの代物をただ引っ張り出して山奥に潜んだ。
アンテナを建て、来るはずのない通信を待ちながら、唯一水の音がする泉へ毎日身の安全を祈った。
もちろん、なんでもいいから友達は欲しかったので、針葉樹林との境目あたりでたまたま懐いてきたキツネを飼っている。今はアベックにしている。かわいい。
世間では騒ぎになってるんだろうなー、と音を出すテクノの棒と狐を撫でながら過ごしていた、そんな日だった。
前に警察が私を探す無線を一回傍受して以降何も受信しなかったアンテナが反応を示した。
しかし、その信号は「ツー」のみだった。
「なんかの通信試験なんだろうか。」と思いながら放っておいたが、どうも気になる。私は唯一変化が起こっているであろう場所を思案した。「『祈りの泉』か?」
私は急いでちゃちなポンポン自転車で繰り出した。そして、そこに『それ』はいなかった。
しかし何かが共鳴する。異常なくらいに、エクスタシーを齎しかねないほどに、それは一種の快楽であった。やがて私はその共鳴に変化があることに気がついた。それは言葉だった。
「お主が森の防人か。」
この共鳴への返信方法がわからず、思案をしていると波紋を出しているような感覚に苛まれた。それはただ一定頻度の、原子の大きさよりも細やかで正確なものだった。
私はそれを「ECHO」と名付けた。そして、これへの返信方法が思考映像の変化であると理解した。
試しに「否定的」な映像を思考する。すると、自らのECHOが変化した。そして、向こうのECHOも変化した。コミュニケーションが取れたのだ。
「ではなぜ其方はこの森に住まうのだ?」
「人間社会の虐げられる歯車よりも森の野人としての生活が性に合っていたからだ。」
「キミは実に変わっていて、清純だ。」
「なぜだ?」
「ここに来るのはダーウィンを蹴飛ばすような奴らばかりだ。進化論を焚書するがごとく生きている。」
「理解した。そちらは誰だ?」
「私はここの、さしずめ『Spirit』と呼ばれる存在だ。」
「『Spirit』…遠い彼方の言葉で『魂』と言う意味か…」
「私は清純なものとのECHOを文字通り糧にし、エネルギーとして使っている。私は瀕死だった。」
「貴方を救えたのなら嬉しい。すまないが、もうすぐ日が暮れて帰れなくなってしまうので帰らせてもらう。」
「こちらこそ、私を穢れたECHOから救ってくれてありがとう。」
私はポンポン自転車で急いで家へ戻った。狐たちが出迎える。食事を与え、自らも食事を取ることにした。やがて眠くなり、そのまま翌朝まで寝てしまった。
翌朝も私は祈りの泉へ出向いた。その翌日も、またその翌日も。月が5回は黒化した。
彼の力を借りることもあれば、逆も然りであったが、やがて進化論を逸脱した存在がここにも現れた。
奴らは気持ち悪いほどのゴルダン糸をシルベ生地に縫い付けていた。奴らはSpiritとECHOを交わしたが、当然うまく……SpiritからのECHOが届いた。
「た」
そこでECHOは途絶えた。変化ではなく、波紋そのものが止まってしまった。私はその場で暴れ回った。身体中にあった快楽が突如として消えたのである。エクスタシーに満ちていた私の体はただの抜け殻と化した。
しかし、理性が叱り付けた私の体はすぐに持ち直した。あの穢れた気持ち悪い連中を追い続けると、街に出た。しかし不幸なことにそこは中核城塞で、門番に止められ入境不可能。
私は煮えたぎるような怒りをどうにか抑えきり、自宅に着いた。
黒化始まりの日、ECHOなし。
黒化半成の日、ECHOなし。
月光終わりの日、ECHOなし。
無月の日、ECHOなし。
月光復讐の日、ECHOなし。
黒化半衰の日、ECHOなし。
黒化終わりの日、ECHOなし。
月光光輝の日、ECHO…あり。
意外にも早く訪れたその再来は、エクスタシーではなく苦しみとなって現れた。「きもち…わr…uい…まぶs…i…なんd…」
Spiritが予断を許さない状況であることが明らかになった瞬間であった。

(続きは次話題がなくなった時にでも)

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